武士は背中にも隙がありません。後ろから切りつけられたことを示す背中の傷は、武士にとって最大の恥ではなかったでしょうか。
あまり海外旅行慣れしていない日本人観光客を見ると、私から見ても結構隙だらけのように思えます。ただ立っている姿を見ただけで、どこがどうとは言えないのですが、意識の中に「危険」という概念が組み込まれていないのが、はっきりと見て取れるような感じがします。逆に、それ程海外旅行慣れしていなくても、一度でもひったくりなどにあった経験のある人は、どこか全身に注意のアンテナを張っているのがわかります。日本に帰省した時に、電車内や通りなどでバックをしっかり抱えるようにしている人を見ると、ああ海外に長く住んでいたんだな、と思います。
パッケージの海外旅行では、観光スポットだけでなく、ちょっと裏通りに入って掘り出し物を見つけたり、後で自慢出来るような経験をしたくなったりしがちです。が、海外生活が長くなると、国を問わず、足を入れてはいけないような通りなどは、勘や嗅覚でわかるようになってきます。そこを歩いている人や、その通りの店の人の目つきなどに、何となく嫌な感じを受けるのです。繁華街のすぐ裏の通りでも、人通りが急に減ったりしていれば、危ないと思った方が良いでしょう。
こちらで歩道を歩いていると、すぐ前を歩いている女性が、私の靴音を聞いてハッと身を固くするのがありありと見える事があります。キッと後ろを振り返って睨まれる事もあったりします。勿論、後ろからバックをひったくられる事があるのを警戒してのことですが、ちょっと居心地が悪いですね。とはいえ私も、後ろで靴音がすると気になってバックを握る手が強まります。歩調をわざと遅くして、後ろを歩いている人に、追い抜いて前を歩いてもらうようにする事もあります。こういうことをしている人は、背中に隙がありませんね。
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