東南アジアもそうだと思いますが、中南米でも、お手伝いさんを安く雇えます。なのでこちらでは、中所得層でも、お手伝いさんを使う家庭が多いです。高所得層だと、料理専門、掃除専門、子守専門、加えてアイロンがけ専門と、3人も4人も雇うところもあります。アルゼンチンの金持ちだと、男性の執事までおいているところもあるようです。以前コロンビアで、そういうところでベネズエラ人の金持ちの家庭で子守専門をしていたお手伝いさんを雇ったことがあって、彼女に、そういうところの主婦というか奥さんは一体何をするの?と聞いたら、何もしないで、化粧だけして一日ゴロゴロしていると言っていました。昔の貴族生活の名残っぽいですね。
スペインに住んでいた時に、そういう家庭で育ったらしい写真家志望のペルー人の女の子と、建築家志望のコロンビア人の女子留学生と、アパートをシェアしたことがあります。アパートの掃除の分担を決めて、皆で手分けして週一回掃除をすることにしていたのですが、コロンビア人の女の子と私が一生懸命掃除をする傍ら、ペルー人の女の子は何もしないでリビングのソファーにデンとすわり、私がソファー回りの床をモップで拭こうとしたら、足を挙げて拭かせてくれます。彼女にしたら、掃除など、普通の女性のする仕事ではないらしいのですね。さすがに頭に来たので注意をするのですが、掃除の仕方そのものを知らないらしく、嫌々やられても邪魔でしょうがないので、コロンビア人の女の子と一緒に、彼女がいない時に掃除をしました。勿論、彼女の寝室まではせず、自分の寝室と、リビングやバスルーム、キッチンなど共有の場だけです。
こちらの人は、中流家庭でも、他人(お手伝いさん)が家の中にいることに小さな頃から慣れているので、一家団欒の食事の場で、その他人が給仕をしたりするのは別に気にならないらしいのですが、日本人にとってはちょっと苦痛です。掃除などをしてくれるのは助かりますが、掃除をしてもらっている傍らでボーっとしているのも居心地が悪いですね。
それに、嫁と姑の問題と同じだと思いますが、家の中に家事をする者が二人いるのは、軋轢の元です。それぞれ自分なりのやり方があるので、それと違うやり方をされると、気になって仕方がありません。嫁と姑に限らず、定年後の男性で、奥さんに先立たれて自分で家事をするのに慣れた男性が、嫁いだ自分の娘と同居すると、やはり娘のやり方が気に入らなかったりするようです。こういう場合は、どちらかに主導権をとらせないと、ストレスがたまるばかりです。お手伝いさんの場合は、当然ながらお手伝いさんが我慢して、女主人の指示に従ってやれば良いのですが、日本人の場合は、その指示をお手伝いさんにするのも恐縮してしまいます。
私の場合は働いているので、私が仕事に行っている間に、家事を、基本的にお手伝いさんのやり方でやってもらっています。どんなやり方をしているのか知りませんが、その方が、気が楽です。お手伝いさんにとっても、脇でいちいち指示してくる専業主婦のところで働くよりも、ずっと働きやすいに違いありません。お手伝いさんの間では、日本人に限らず、お手伝いさんを使うことに慣れていない先進国の外人のところで働いていると言うと、羨ましがられるようです。
お手伝いさんのやり方に任せている私でも、彼女のやり方で気に入らないところが、ほんの些細な事ですがいくつかあります。
まず、服のハンガーをクローゼットにかける時、私はこちら側から向こう側にむかってかけるのですが、以前使っていたお手伝いさんは、向こう側からこちら側にむかってかけていました。全然大した事ではないし、それでなにか不都合があるかというと何もないのですが、私はそれが気になって仕方がありません。でもそんな些細なことで注意する自分も嫌なので、我慢して、何も言わずにハンバーをかけなおしていました。そのうち気がついてくれるかと思ったのですが、最後までそのやり方は変わりませんでした。
それから、洗濯物をしまう時に、特にタオルやシーツなど、私は洗ったものを一番下に入れて、上から順番に出していくのが習慣なのですが、お手伝いさんは、洗ったものを一番上に置いて、下から順番に出していたようです。しばらくしてそれに気づき、これはさすがに、こうやってねとお願いしましたが、たまに忘れることがあったようです。それをまた姑根性でいちいちチェックしかかったこともありましたが、自分で洗濯物をしまうのすら面倒になってしまっていて、こういう事を気にするのも精神衛生上悪いことに気づき、気にしない事にしようとしました。今は、こんなことで煩わされないように、洗濯ものをしまうのは自分でやっています。
以前、日本人駐在員の奥さんが、お手伝いさんが鍋を使って雑巾を洗っていたのを発見し、気を失いそうになったと言っていたことがあります。私は、台所用と掃除用はちゃんとゴム手袋も雑巾類も分けて用意しているけれど、私がいない間にどういうやり方でやっているかは、全く知りません。ただこれまで食中毒などなった事がないので、汚いことはしていないだろうと信じて、これも精神衛生上の為に、気にしないようにしています。
うちは小家族だし、子供も私も昼間いないので、汚れることも殆どありません。でもせっかくお金を払って来てもらっているお手伝いさんが、暇で遊んでしまうのがもったいないので、食器類などは自分で洗う余力があって、寝る前に洗ってさっぱりしたいと思っても、洗わずにそのままにし、お手伝いさんのお仕事用にとっておきます。床やテーブルを汚してしまっても、そのままにしておいて、彼女がその付近をちゃんと掃除したかどうかが、すぐわかるようにしておきます。いつもピカピカだと、掃除をしたのかしないのか、わからないからです。まるでお姑さんだわと、自分が嫌になることもありますが。。。お手伝いさんなんて雇わずに自分でやれよ、って言われそうですが、こうして一応、雇用に貢献しているとは思っています。
私のところは親戚とか身寄りがいないので、これまでお手伝いさんには随分助けてもらいました。エクアドルに住んでいた時のお手伝いさんは、息子が生まれ時から面倒をみてくれて、18年たった今でも、息子の誕生日にはメッセージを送ってくれます。10年くらい前までは、他の国に住んでいてもわざわざ郵便で、ちょっとしたプレゼントも送ってくれました。コロンビアに住んでいた時のお手伝いさんは、仕事で遅くなったときはちゃんと残業手当も厚めに出して、私が泊りの出張があったときは家に泊まってもらって手当も出して、そのお金で娘を大学に行かせられたと、今でも感謝されています。旦那さんはタクシーの運転手だったので、便利なプライベートUberのように使わせてもらったり、まるで家族のようにお世話になりました。勿論今でも、折に触れてメッセージをやりとりしています。
ここまでは本当に、お手伝いさんには恵まれていましたが、メキシコではハズレです。これについては、別の機会に。
上の写真は、ボゴタに住んでいたマンションの窓から撮ったものです。こんなところに、住んでいました。
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