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チューリッヒ~バルセロナ夜行列車

今日は日曜ですが目覚めたら、イタリアのミラノに住む日本人の友人から、バカンスで、バイク好きの旦那様や友人たちとベネチアの北の方にツーリングに行ったと、写真メッセージが入っていました。イタリア特産の蒸留酒グラッパで有名なバッサーノ・デル・グラッパや、年に一度広場で人間が駒になってチェスを行う、マロースティカという街に行ったそうで、素敵ですね。この人間チェスの街は知らなかったのですが、私が大好きな不思議な夢のような雰囲気につつまれた行事に違いありません。いつか行ってみたいなぁと、また一つ、バケットリストの項目が増えました。

スペインに住んでいた時に彼女のところに遊びに行って、一緒に車でミラノからスイスの国境を越えてコモという街に行ったことなどを思い起こしながら、そういえば日本から初めてスペインに行ったのは、スイス経由だったことも思い出しました。スペイン行の飛行機ではなくスイスのチューリッヒ行のフライトをとって、チューリッヒからバルセロナまで夜行列車で行ったのです。そこからまた列車で、夏だったので一面に咲いた向日葵畑を見ながらグラナダに向かいました。

 

それを思い出しながら今度は、バルセロナに住んでいた時の出来事を、思い出しました。

日系の大手通信企業で社内通訳・翻訳をしていたのですが、その会社の取引先の日本の大企業で、天下りで重役になっていた方がスペインに出張に来られたことがあります。その方は若い頃に、私と同じようにこのチューリッヒーバルセロナ夜行列車でバックパッカーの旅をしたらしく、その想い出にひたるセンチメンタルジャーニーをしたいので、御付の同伴なしで、一人でスイスからスペインに入りたいと言い張ったようです。それで、私が勤めていた会社の日本本社からアテンド係としてこられた部長さんや、その取引先の御付の人たちと一緒に、バルセロナで待つことになりました。

 

アテンド係の部長さんは、偉いさんのアテンドをそそうなく完璧に実行するという使命でピリピリでした。バルセロナに着いたら投宿するホテルは事前に隅々までチェックし、お連れするレストランも、しっかり下見と試食をしていました。私は当時社内通訳をしていたのですが、まだ入社したてのペーペーだったので、ご一行の付き添いはマドリード本社のベテラン通訳の方がされ、私は、スイスから夜行列車で入る偉いさんの荷物の手配とかのロジスティック面の雑用と、ホテルに着かれて夕食までに少し時間があるので、その間にちょこっと行けるホテルの近所のバールのようなところを探してと、頼まれました。「あなたがいつも行くようなところじゃなくて、お偉い方だから、ニューヨークにあるような高級な洒落たところをフロントで聞いてきてっ」とキンキン声です。

 

そんなことをしながら、チューリッヒからの列車が着く時間になったので、皆でバルセロナ駅にお迎えに行きました。

ところが、列車は無事に到着して、お偉いさんも無事列車から降りてきたのですが、スーツケースが着いていないことが発覚しました。アテンド係の部長さんは、もう真っ青です。これはもう、フランス国境で列車乗り換えの際にスペイン人の駅員が乗せ忘れたか、下手したらスペイン人に盗まれたのではと、部長さんは当然のように考えて、駅員室に私を引っ張って行って、わなわなと駅員にクレームしました。まあこの部長さんでなくても、スペイン人が悪いと思うのはごく普通かもしれません。

その時駅で対応してくれたのは、太っちょのスペイン人のひとの良さそうなおじさんでした。こういう荷物の紛失は珍しいことではないらしく、次の便で来ることもあるからちょっと待ってみなさいと、のんびり言います。うしろから中年の明るいおばさんも出てきて、「そうよ、出てくるから心配しなくてもいいわよ。」と言ってくれます。

部長さんは、「ちょっとって、アンタ、次の便って明日でしょ?それまでどうするのっ?この人は偉いさんなのよっ。あなた達が悪いんだから、ちゃんと探してすぐ持ってきなさいよ」と目を三角にしてまくしたて、私に通訳しろと言います。

そのおじちゃんとおばさんは、私が怒られていると思ったのか、まあまあ落ち着いてと部長さんをなだめようとしたのですが、火に油をそそぐようなものです。日本人からするとのんびりした動作で、駅内の担当課に連絡して、フランス国境やスイスにも電話で確認していますが、沢山の荷物をさばいているフランス国境やチューリッヒで、すぐに見つかるわけはありません。しかし部長さんは、そういうスペイン人の対応はますます杜撰でいい加減に見えるらしく、「もうこういう国なんで、申し訳ありません」と、自分がミスしたかのように偉いさんにペコペコ謝っています。

 

幸いこの偉いさんはとても寛容な方で、世界中に出張に行っているので荷物の紛失は初めてではないようで、まあ連絡を待ちましょうとおっしゃって、ホテルに向かいました。私はカリカリの部長さんとバルセロナ駅で、スイスとフランスからの連絡を待つことになったのですが、部長さんから5分おきにまだかと聞きに行かされ、その度にスペイン人のおじちゃんから「あんたも大変だねぇ」と慰められました。おばちゃんも、「これでも食べなよ」とむしゃむしゃ食べていたおやつを分けてくれたりします。

 

2時間くらい待ったでしょうか。スイスから連絡があって、精密時計生産国のスイス人の駅員が荷物を乗せ忘れたので、明日の便で送るとの事。スペイン人のおじさんとおばさんは、「ほらね、出てきたでしょ」とウィンクして自分のことのように喜んでくれました。部長さんがカリカリしているのも察したようで、部長さんの肩もポンとたたいて「良かったね」と言っています。

悪いのはスペイン人じゃなくて、金髪碧眼のスイス人だったって、お偉いさんに言っておいて下さいね、と部長さんに言いたいところでしたが、そんなことをペーペーの私が言うとよけい怒ると思って言いませんでした。でも、スペイン人を頭ごなしに悪者にして少し悪いとは思ったようです。私がフロントに聞いて選んでおいたバールは、ニューヨークにあるような洒落たものではなく(そんなバールはスペインにはないと思いますが)大学生たちがたむろしているホテルの近くのバールで、部長さんは不満げでしたが、後で、「あのバール、地元の雰囲気が出ていて気に入ったようですよ」と、連絡をくれました。

 

私がラテン系の国に長く住んでいる理由が、少しお分かり頂けたでしょうか。


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