上の絵は、エクアドルの友人からもらった戴き物で、その後ずっとチリからコロンビア、メキシコまで、一緒に持ってきたものです。エクアドルのエンダラ・クロー(1936–1996年)という、20世紀のラテンアメリカの潮流だった、日常と非日常が融合した世界を描く「魔術的リアリズム」を代表する画家の、作品です。日本では殆ど知られていないと思いますが、国際的な賞も数多く受賞しており、ヨーロッパではアンデスの侯爵とも呼ばれたそうです。
エクアドルに行くとこんな絵が沢山お土産物用に売られていて、私はこの戴き物以外にも自分で下の絵を買いました。
「鐘の雨」というこんな絵も有名です。
ちょっとシュールレアリズムのサルバドール・ダリの絵にも似ていますが、ダリの絵よりも童話っぽい感じで、好きな画家のひとりです。よく出てくるモチーフは、銀河鉄道のような空を飛ぶ電車と、空から降るリンゴ、高地なので山のお天気のキト市でよく出る霧、インディオの村などで、なんだか夢に出てきそうな風景です。
よく見ると、屋根の瓦が一枚一枚丁寧に違う色で塗られていて、かなり手がこんでいますが、画家のエンダラにはアシスタントが沢山いて、屋根はアシスタントが塗っていたと、エクアドルで絵に詳しい友人に聞きました。そしてこのアシスタントたちはエンダラの絵の複写版を作って売り始めたとのことで、街中で売られている絵は、このアシスタントたちが作った複写版のようです。更には、エンダラ自身の絵ではなく、エンダラ風の絵を真似て描くアシスタントも出てきたようです。一番上の写真の戴き物は、よく見ると右下にエンダラではないサインが入っているので、エンダラのオリジナルではないのではないでしょうか。でも、一見完璧なエンダラ風ですし、エンダラ本人の絵よりも好きな人もいるかもしれません。
私が自分で買った上から2番目の絵にはサインが入っていないので、エンダラ本人の絵の複写なのか、弟子のオリジナルなのかは分かりません。3番めの絵は、ネットで拾ったエンダラのオリジナルです。
私は大学でラテン文学を専攻したのですが、教授はラテン文学をシュールレアリズム文学として扱っていました。読むからにそんな感じなので何の疑いもなかったのですが、南米に住み始めて、日本人の常識では考えられないようなことに遭遇することがあるので、あれはシュールでもなんでもなくて、日常の世界なのではないかと思えるようになりました。
エンダラという画家がいて、その弟子たちがクローンのように増殖していって、増殖されたエンダラのクローンの絵が本物のように売られて世界に出回っている、という図もまた、当地では誰も何も言いませんが、シュールなのではないでしょうか。
下の写真はそんなエンダラが絵を描いていたキト市の、旧市街で撮ったものです。
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